仏壇の正しいまつり方

仏壇にご本尊がなかったり、位牌の位置が違ったり、段の上位下位を間違ったり等と疑問あるいは誤りがあると思います。日蓮宗信徒として正式な仏壇についての意義・まつり方を学んで頂き、立派な信仰の道場を作って頂きたく願うものです。

仏壇の意義

そもそも仏壇の起こりは、お寺でした。古くは、天武天皇十四年(六八五年)に「諸国の家ごとに仏舎をつくれ」とおふれが出たと「日本書記」に出てきます。この時の仏舎とは持仏堂のようなもので、それが発展してお寺となる事もあったようです。お寺には本尊を安置し、その台には須弥壇を用い、周囲には様々な形で荘厳を巡らします。仏壇とは、お寺を小さくして一つの箱形にしたものと言えるのです。即ち仏壇は仏様の世界を小さくした言わば霊山浄土(永遠の命を持たれるお釈迦様の悟りの世界の事で、法華経を信じ、妙法五字を受持する者はこの霊山へ往詣する事が出来る)なのです。それ故、仏壇は第一にご本尊様を供養する道場であり決して先祖(位牌)をまつるのが第一の目的ではないのです。

よく、分家の方でうちには仏様がまだないから仏壇は要りませんと言われる方がおられますが、今申しましたように仏壇はご本尊様をおまつりするべきものですから各家になくてはならないものです。

ご本尊(ほんぞん)

まず仏壇をまつる上で必ず第一にまつらなくてはならないのがご本尊です。ある家では本尊がなく位牌だけがおまつりしてあるところがありますが、それでは仏壇の意義に沿わずおかしい事です。

日蓮宗で定めるご本尊は、十界勧請の大曼荼羅であります。実際まつる上では、大曼荼羅ご本尊か三宝尊(お題目とお釈迦様と多寶如来)と日蓮大聖人のご尊像を安置する事もあります。願わくば日蓮大聖人のご尊像は、是非、大曼荼羅と一緒におまつりして頂きたい。

ご本尊は、仏壇の最上段の中央にかけ、その前に日蓮大聖人の像を安置します。又この最上段の両脇には、お寺からお受けになった鬼子母神像(向かって右)大黒天像(向かって左)をおまつりし、無い場合は、お札類等をおまつりします。この最上段には、くれぐれも位牌はおまつりなさらないように注意して下さい。又ご本尊は、必ず菩提寺から受けて頂くようお願いします。

過去帳(かこちょう)

長い歴史のある家では、位牌の数も多くなってまいります。そこでよく用いられますのが「過去帳」です。「過去帳」は普通一日一日の日めくりになっておりますので、その日に亡くなられたご先祖様の戒名、俗名、没年月日、行年、続柄などを記し、毎日ページを改めご回向することで、故人の霊を慰めることができます。これから「過去帳」を用意しようというお方でご先祖がはっきり分からない場合は、菩提寺にお尋ねされればよろしいかと思います。

位牌(いはい)

位牌は、仏壇の上から二段目におまつり致します。二段目の所は、位牌が置けるように段が設けてありますのでそこにおまつりします。向かって右に先祖代々の位牌、向かって左に祖父母・両親等の位牌をおまつりします。

先祖の位牌は、他の位牌より高めて作ります。

五具足(ごぐそく)

仏前の供養具である、香炉、花瓶(一対)燭台(一対)を一セットとした飾り方をいいます。(略したものに花瓶、燭台を対としない三具足もあります。)香、華、灯明を仏前に供える事は日本では、鎌倉末期頃から始まったといわれています。仏前ではご本尊に向かって両端に花瓶、その内側に燭台、中央に香炉を置き、三足の香炉は一足が正面になるようにしておきます。尚、三具足の場合は、左側に花瓶、中央に香炉、右側には燭台がくるように置いて下さい。

高坏(たかつき)

三宝(仏、法、僧)或いは、ご先祖様の霊に対し報恩の念を捧げお供えする品々を供物といい、高坏とはそのお供え物を盛るもので、普通は対で用います。果物とお菓子をお供えする時は果物は左、お菓子が右にくるようにして下さい。頂き物などをまず仏壇にお供えしその後で賞味するという習慣は誠に心がこもっていて子孫に伝えていきたいものです。

経机(きょうづくえ)

経本等をのせる机のことをいいます。仏壇のスペースの都合上、経机の上に五具足(三具足)やお供え物を置かれている所もあるようですが、経机本来の意味から申しますと、お勤めの時に用いる経本やリン程度の物だけに留めて頂きたいものです。

また、経机の右側には読経・唱題の時に用いる木鉦(木魚)の用意があれば幸いです。

結び

「信は荘厳より」とは、形に表すことが大事だということです。今回の特集をご覧頂き、皆様の仏壇を見られていかがだったでしょうか。

一つ一つ細かい所では、説明不十分の所もあるかもしれませんが、菩提寺のお上人様に相談されながら立派な道場を作って頂きたいと思います。

また補足になりますが、お仏飯をはさんで右にお茶、左に水をお供えします。過去帳は必ず菩提寺から書いてもらいます。仏壇の中の打敷は、他宗派の三角形のものは使用なさらないように注意して下さい。

仏壇を購入されましたら必ず菩提寺のお上人様に開眼・入魂の法要を営んで頂いてからお給仕を致しましょう。

仏壇は、朝夕礼拝供養し報恩感謝を捧げる道場です。どうか家族そろって力強くお題目をお唱えし、お給仕の誠を尽くして下さい。